特に何も意識せずに育てた(正確には勝手に育ってしまった)我が家の息子くんは、とても優しい心の持ち主です。
なぜ優しい子に育ってしまったのかを考えると、どうやら彼には「優しさを前面に出すことを恥ずかしがらない」という特技を持ち合わせていることが分かりました。
誰でも我が子には「優しい人」になって欲しいと願うものです。
しかし、どうすれば優しい子になってくれるのか?というと、なかなか難しい問題。
世間でも、「優しい子を育てるための親の行動パターン」などが提唱されているわけですが、その通り実践したからといって、必ずしも我が子が優しい子になるとは限りません。
そんな中、わが家の優しい息子は、なぜ優しくなったのか?
今回は、そんな息子の話です。
誕生日には必ず手紙をくれる優しい子
うちの息子は今のところ10歳です。
あと10年もしないうちに20歳で成人してしまうほど成長しました。
この辺りの年齢に達した男の子というのは、往々にして恥ずかしがり屋になります。
特に、家族への優しさとか、友達に優しい言葉をかけるといった行動に極端な抵抗を感じ始めるお年頃です。
「そんなことないでしょ!人によるでしょ!」というご意見もありましょうが、私が10歳のころの経験から導き出した理論なので間違いありません。たぶん。
そんな「優しさ」を表現するのが下手な年頃のはずの息子は、毎年のように家族の誕生日に手紙を書いて渡してくれます。
文字が書けるようになった5歳のときから欠かさず手紙をくれるのです。
こういった珍しい行動を彼が続けているのには、ある出来事がきっかけになっているのではないか、と思うのです。
その出来事とは・・・
同級生との関係で悩んでいたときの話
ある日の夕食どき、いつも雄弁でおしゃべりな息子が全く言葉を発せず、元気がありません。
どうしたのかを訊いたところ、どうやら同級生に意地悪をされるらしいのです。
その同級生は、悪ふざけで息子を突いたり軽く叩いたりしてくるとのこと。
小学生の男の子によくある「仲良し同士の悪ふざけ」みたいなものなのですが、息子としては、どうすればやめてくれるのかを悩んでいるのでした。
その話を聞き、僕も男の端くれとして、ついつい熱くなってしまいまして、
「そんなやつ、ぶん殴ってやれ。若しくは、引きずり回してお父さんの所へ連れてこい!」
と、まあ、勢いよく息子に言い放ってしまいました。
言い放ってはみたものの、息子の反応がすこぶる悪い。
どうやら、そういうことではないらしいです。
そんなとき、姉である我が娘がひと言。
「あんた、本当はその子と仲良く付き合いたいだけなんでしょ。」
姉の言葉を聞いた息子は、小さく、しかし明確な同意の意思を持ってうなずきました。
娘は続けます。
「だったら、はっきり言えば良いんじゃない?『僕は君と仲良くしたいんだ。だから意地悪はやめてよ』って。」
見る見る息子の顔は晴れやかになっていきました。
「うん、明日その子に言ってみる」と息子。
息子は姉に言われたとおり、次の日に同級生の子に伝えました。
その結果、意地悪は無くなり、今では毎日のように二人で仲良く遊んでいます。
この経験が息子にもたらしたものは、恥ずかしがらずに相手に思いを伝えることの大切さだったようです。
恥ずかしがらなければ悩みは解消
同級生との一件以来、普通は少し照れ臭いような言葉でも、息子は恥ずかしげもなく言うようになりました。
例えば
「僕はお母さんが大好きだよ、でも今は反抗期だから大目に見てね」
「僕は家族が笑顔でいてくれるのが一番うれしいよ」
(う、浮く、歯が浮く・・・)
姉である娘が、親の言うことをきかず母親にゲキ怒りされたときには、
「お姉ちゃんを怒らないでよ!お願いだから許してあげてよ」
と、母親に泣いてすがりました。
文字にすると、それほどでも無いのですが、実際に家族内で言葉を発するには小っ恥ずかしいものばかりです。
歯が浮く台詞ばかりで、歯が抜けそうです。
でも、彼は全く動じること無く、ましてや歯が抜けることも無く、優しさに満ちた言葉を連続発射します。
もはやガンジーです。もしかしたらブッダかも。
恥ずかしがらない環境をつくる
10歳になった今でも、息子の発する優しい言葉は止まるところを知りません。
なぜなら、彼の発する歯の浮くような台詞を冷やかす家族がいないからです。
誕生日の手紙も、内容を見ると感動と寒さに襲われ、読んでる方が恥ずかしくなるようなことが正々堂々と書いてあります。
でも、息子には感謝の言葉を真面目に伝えます。けして冷やかしません。
そうすることで、これからも彼は周囲を凍り付かせるような歯の浮く台詞を言い続けるのです。
それは同時に、優しさに満ちた子であり続けることにもなるのだと思います。
ちょっと良い事を言ったり、優しい行動をとると、冷やかされることが多いのが男子の世界です。
でも、堂々と優しさを表現することができれば、必ず人は感動し感謝をします。
息子の同級生が悪ふざけを止めたのも、息子の「仲良くなりたいだけなんだよ!」という真っ直ぐな思いが通じたからなんですよね。
いかに年頃の男の子といえども、これだけ真っ正面から思いを伝えられたら、冷やかすことはできなかったようです。
恥ずかしがらない行動は家族同士でも求められます。
家族だからといって恥ずかしがらず、「ありがとう」「うれしい」という感謝の言葉を普段から発することで家庭も家族も優しさを保つことができると思います。
優しい家族に育てられれば、子供は優しい子になり、家族関係が良くなれば、家族は幸せになります。
そう考えると、
優しさに満ちた言葉を恥ずかしがらずに発することの大切さを、
10歳の息子から教わったのかもしれません。